レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム


概要

2014年11月、本研究室が中核となり「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」を設立しました。このコンソーシアムでは、産官学のメンバーが連携してレアアース泥の開発技術を確立することにより、レアアースの安定供給に貢献するとともに、レアアースの新たな需要開拓を通じて日本の産業を活性化することを目指しています。現在、日本を代表する30以上の企業、政府機関、大学・研究機関が参画し、世界初の海底鉱物資源開発の実現に向けて、資源量探査や環境モニタリング、深海底からの採泥および揚泥、選鉱・製錬、残泥処理、レアアースを活用した新素材開発に係る技術を各部会において検討するとともに、それらの成果を踏まえたレアアース泥開発システムの全体最適解を検討しています。


2024年7月、日本財団と東京大学の南鳥島マンガンノジュール調査の結果を受け、レアアース泥と並行してマンガンノジュールも重要鉱物資源として開発・商用化することを目指し「東京大学レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」に名称を変更いたしました。




政策への反映

2011年の発見以降、私たちの研究グループがこれまで挙げてきたレアアース泥に関する研究成果は国からも高く評価されており、「海洋基本計画」や「日本再興戦略」「未来投資戦略」など国の主要施策にもレアアース泥の調査・開発技術の推進が明記されてきました。また、我々の研究成果をうけて、2018年からは内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム 第2期 (SIP2) 革新的深海資源調査技術」によりレアアース泥の採泥・揚泥技術の開発が開始されるなど、我が国の資源政策に多大なインパクトを与えています。


これまでの歩み

2011年7月4日

東大・加藤泰浩准教授らが、太平洋の深海底からレアアース泥を発見 (Kato et al., 2011 Nature Geoscience)。※文科省科学研究費補助金『基盤研究 (S) (2010~2014年度)』の成果 ⇒ 詳しくはこちらへ
2012年6月25日
東大・加藤泰浩教授らが、南鳥島EEZ内にレアアース泥が分布していることを発見 (加藤泰浩, 2012 資源地質学会)。
2012年7月20日

東大工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンター主催による「レアアースのすべてを語る 〜海底レアアース泥の探査・開発から削減技術、製錬、リサイクルまで〜」が開催。

2012年7月13日
東大・加藤泰浩教授 著 「太平洋のレアアース泥が日本を救う」 (PHP新書) が刊行。
2013年1月21日~31日
東大・JAMSTECが共同で南鳥島EEZ内の航海調査 (KR13-02航海) を実施し、超高濃度レアアース泥を発見。
2013年2月20日~6月25日
経産省・JOGMEC主催による「南鳥島海域のレアアース泥に関する勉強会 (全4回)」が実施。東大・加藤泰浩教授が委員を務める。
2013年2月27日
NHK・クローズアップ現代「密着レアアース調査船~“脱中国“はできるのか~」で、レアアース泥航海調査 (KR13-02航海) の様子を放映。
2013年3月21日
東京大学・JAMSTECにより、南鳥島周辺における超高濃度レアアース泥の発見とその分布概要(南鳥島調査航海について)」をプレスリリース。
2013年4月26日
海洋基本計画 (第2期)」が閣議決定。発見されたばかりのレアアース泥が記載される。
レアアースを含む海底堆積物については、将来のレアアース資源としてのポテンシャルを検討するための基礎的な科学調査・研究を行う。また、平成25年度以降3年間程度で、海底に賦存するとされるレアアースの概略資源量・賦存状況調査を行う。さらに、高粘度特性と大深水性を踏まえ、将来の開発・生産を念頭に広範な技術分野の調査・研究を実施する。』と記載。
2013年11月29日経産省・JOGMECにより「南鳥島海域のレアアース泥に関する勉強会 報告書」が公開され、3ヶ年に及ぶ長期計画が策定。
2014年1月16日~7月29日海上技術安全研究所主催による「レアアース泥に関する勉強会 (全5回)」が実施。東大・加藤泰浩教授が委員を務める。
2014年4月1日
内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム (SIP1) 「次世代海底資源調査技術」が開始 (~2018年3月末まで)。レアアース泥の成因解明に関する研究を、東大 加藤・中村研究室が中心となり実施。
2014年11月7日「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム (座長: 加藤泰浩) 」設立。
2016年6月2日日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」が閣議決定。
海洋資源については、砂層型メタンハイドレートについて、本年度中に1か月程度のガス生産実験を実施し、表層型メタンハイドレートについて、資源回収技術の本格調査・研究開発等に着手する。海底熱水鉱床について、世界初となる採鉱・揚鉱パイロット試験を来年度に実施するとともに、レアアースを含む海洋鉱物資源について資源量の詳細な調査・探査や生産技術の調査等に取り組む。』と記載。
2016年6月2日経済財政運営と改革の基本方針2016」が閣議決定。
国内外のLNG・天然ガス取引環境の整備や、石油・天然ガス・メタンハイドレート・海底熱水鉱床・レアアースなどの国内資源の調査や実用化に向けた取組を進める。』と記載。
2016年7月6日経産省・JOGMECにより、2013年度から3年間にわたるレアアース泥に関する取組成果が取りまとめられ、「レアアース堆積物の資源ポテンシャル評価報告書」が公開。
2016年8月26日JAMSTEC・東大により、「南鳥島沖の排他的経済水域内の深海底に広大なマンガンノジュール密集域を発見~三種の酸化物海底資源の包括的な成因解明のための手掛かり~」をプレスリリース。
2016年8月28日NHK Eテレ・サイエンスZERO「独占密着!海底に眠る巨大鉱床!」で、南鳥島のマンガンノジュールとレアアース泥について特集。解説として、東大・加藤泰浩教授が出演。
2016年11月9日東大・加藤泰浩教授と、JAMSTECおよびコンソーシアム参加企業により、南鳥島レアアース泥からレアアースを精製し、世界初となる海底鉱物資源製の白色LEDおよび高輝度蓄光材の試作に成功。
2017年4月19日東大・加藤泰浩教授が、参議院「資源エネルギーに関する調査会」の参考人として意見陳述。
2017年6月9日未来投資戦略2017 ―Society 5.0 の実現に向けた改革―」が閣議決定。
海洋資源開発に関して、メタンハイドレートについては、海洋産出試験の結果等を踏まえ、開発・商業化に向けた技術開発等の官民協力を促進する。海底熱水鉱床、レアアース泥等については、開発・商業化に向けて官民で取り組む。』と記載。
2017年6月9日経済財政運営と改革の基本方針2017」が閣議決定。
資源確保に向けて、石油天然ガス・金属鉱物資源機構のリスクマネー供給等による権益獲得を引き続き進めつつ、アジアのLNG市場の拡大の取組を強化する。国内でも、石油・天然ガス開発の促進や、メタンハイドレート・海底熱水鉱床・レアアース泥等の海洋資源の開発・商業化に向け官民で取り組む。』と記載。
2017年11月27日衆議院・第195回国会予算委員会において、新藤義孝 衆議院議員・元総務大臣が南鳥島レアアース泥に関する質疑を行い、安倍晋三 総理(当時)が答弁を行う。
安倍総理より、『資源に乏しい我が国にとって、EEZ内に存在する海洋資源の開発は極めて重要。特にレアアースはその大半を海外、とりわけ中国に依存していることから、レアアース泥の開発は夢のあるプロジェクトである。LEDなどの試作にチャレンジすることは世界へのアピールになると同時に、今後事業をさらに加速していく上でも大変興味深い。』と答弁。
2017年12月18日内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) 「次世代海底資源調査技術」から、「レアアース泥の成り立ち-調査手法の確立に向けて-」が発行 (編:町田嗣樹・中村謙太郎・加藤泰浩。2018年11月19日改訂)。
2018年4月1日内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム第2期 (SIP2) 「革新的海底資源調査技術」が開始 (~2023年3月末まで)。東大・加藤泰浩教授が助言会議の座長代行を務める。
2018年4月10日早大・髙谷雄太郎講師、東大・加藤泰浩教授らが、南鳥島EEZ内の有望海域におけるレアアース泥の3次元資源分布の可視化と、ハイドロサイクロンを用いた高効率な選鉱手法の確立について報告 (Takaya et al., 2018 Scientific Reports)。
2018年5月10日海洋基本計画 (第3期)」が閣議決定。第2期に引き続き、レアアース泥が記載される。
南鳥島周辺海域で賦存が確認されているレアアース泥については、将来の開発・生産を念頭に、まずは、各府省連携の推進体制の下で、SIP「革新的深海資源調査技術」において、賦存量の調査・分析を行うとともに、広く海洋鉱物資源に活用可能な水深2000m以深の海洋資源調査技術、生産技術等の開発・実証の中で取組を進める。』と記載。
2018年6月15日経済財政運営と改革の基本方針2018」が閣議決定。
石油・天然ガス開発の促進や、メタンハイドレート・海底熱水鉱床・レアアース泥などの海洋資源の開発・商業化に向け官民で取り組む。』と記載。
2019年6月21日経済財政運営と改革の基本方針2019」が閣議決定。
石油・天然ガス開発の促進や、海洋エネルギー・鉱物資源(メタンハイドレート・海底熱水鉱床・レアアース泥等)の開発・商業化に向け官民で取り組む。』と記載。
2020年7月17日経済財政運営と改革の基本方針2020」が閣議決定。
最先端の基盤的技術であるデジタル化・リモート化、AI・ロボット、量子技術、再生医療、バイオ、マテリアル革新力、革新的環境エネルギー、アルテミス計画等の宇宙探査、準天頂衛星等各省連携による衛星開発や基幹ロケット開発等の宇宙分野、北極を含む海洋分野(メタンハイドレート、レアアース泥等の海洋資源開発、北極域研究船を含めた極地研究など)の研究開発を戦略的に進める。』と記載。
2021年6月18日経済財政運営と改革の基本方針2021」が閣議決定。
脱炭素社会への円滑な移行を進めつつ、メタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の国産海洋資源開発を含むエネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に取り組む。』と記載。
2021年7月13日東大・加藤泰浩教授と、千葉工業大学・JOGMEC・JAMSTECにより、南鳥島レアアース産の白色LEDスタンド「南鳥島の光」を作製し、千葉工業大学東京スカイツリータウンキャンパスなどで展示を開始。
2021年10月22日第6次エネルギー基本計画」が閣議決定。
我が国の領海・排他的経済水域等に賦存する海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥等の国産海洋鉱物資源については、引き続き国際情勢をにらみつつ、「海洋基本計画」及び「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」に基づき、資源量の把握、生産技術の確立等の取組を推進していく。』と記載。
2022年2月16日東大・加藤泰浩教授が、参議院「国際経済・外交に関する調査会」の参考人として意見陳述。
2022年5月20日南鳥島EEZ内でのレアアース泥開発を念頭に鉱業法が改正。国内のレアアース開発を国として適正に維持・管理することを目的に「希土類金属鉱 (レアアース)」が鉱業法の適用対象となる鉱物に追加。
2022年6月7日経済財政運営と改革の基本方針2022」が閣議決定。
レアメタル権益の確実な確保に向けた支援措置など安定供給体制の強化や、メタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の国産海洋資源の確保に加え、金属鉱物資源等の安定確保に向けた資源循環の促進に取り組む。』と記載。
2022年6月7日参議院「国際経済・外交に関する調査会」の報告書「海を通じて世界とともに生きる日本 最終報告書」が発行。
各種海底資源の中でも、レアアース泥に高い優先順位を置いて開発に取り組むべきである。その際、現在、SIPにおいてレアアース泥の採泥・揚泥技術等の開発が行われているが、今後、試験規模の拡大も含め、継続的に取り組み、技術を確かなものとしていくべきである。また、将来の産業化まで見据えた場合、民間企業の投資が不可欠となることから、リスクや負担を軽減し、これを促進するため、初期探査に対する財政的な支援や、現在、国や関連機関等において保有している探査データ等を利用可能とするための仕組みづくりについて検討すべきである。』と記載。
2022年10月18日内閣府・第2期戦略的イノベーション創造プログラム (SIP2) 「革新的海底資源調査技術」により、地球深部探査船「ちきゅう」の泥水循環システムを用いて、茨城沖の水深2470m海域からの海底堆積物揚泥試験を実施。1日あたり約70トン相当の揚泥に成功。
2023年4月1日内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム第3期 (SIP3) 「海洋安全保障プラットフォームの構築」が開始 (~2028年3月末まで)。東大・加藤泰浩教授がSIP2に引き続き助言会議の座長代行を務める (~2024年3月末まで)。
2023年4月7日東大・加藤泰浩教授ら5名が、「令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)」 を受賞。
南鳥島レアアース泥の開発実現によるレアアースの安定供給確保と、ハイテク産業の振興および新規素材産業の創出を通じた日本と世界の持続可能な発展の重要性についての理解増進に寄与した業績 (『持続可能な社会を拓く国産海洋資源開発への理解増進』) について受賞。
2023年4月28日
海洋基本計画 (第4期)」が閣議決定。これまでに引き続き、レアアース泥が記載される。
『南鳥島周辺海域で賦存が確認されているレアアース泥については、将来の開発・生産を念頭に、まずは、各府省連携の推進体制の下で、第3期SIP「海洋安全保障プラットフォームの構築」において、資源量の精査及び生産技術等の開発・実証に向けた取組を行うとともに、海洋鉱物資源の調査等に広く活用可能な、深海環境を含む海洋データ及び海洋環境データを効率的に取得する、複数AUV調査技術や広域海洋環境モニタリングシステムの開発・実証に向けた取組を進める。また、単に資源開発に留まらず、安全保障上重要な海洋観測・監視、海洋の保全及び利活用を進めるためのプラットフォームの構築も見据え、引き続き、更なる技術開発に取り組む。』と記載。
2024年6月21日
日本財団の委託を受け,東大・中村謙太郎教授が,南鳥島EEZ内のマンガンノジュール調査を実施。
南鳥島EEZ内の10,000 km2 の海域に、約2.3億トンものマンガンノジュールが密集して分布していることを報告。そのコバルト資源量は約61万トン、 ニッケル資源量は約74万トンに達し、日本の年間消費量の75年分に相当するコバルト資源が存在することも判明。今後、日本財団とともに、商業化を見越して1日に数千トン規模でマンガンノジュールを揚鉱する実証試験を計画中。
2024年7月3日
日本財団と東京大学の南鳥島マンガンノジュール調査の結果を受け、レアアース泥と並行してマンガンノジュールも重要鉱物資源として開発・商用化することを目指し「東京大学レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」に名称を変更。