研究内容
研究の方法
フィールドワーク
研究航海
海底鉱物資源や海底火山活動などの研究のため,これまで多くの研究室メンバーが海洋研究開発機構 (JAMSTEC) の調査航海に参加しています.航海は1週間程度から長いと1ヵ月程度です.南鳥島海域や沖縄近海,東北沖などがこれまでの主なターゲットです.この他,国際深海科学掘削計画 (IODP) により行われる過去の地球環境変動を調べるための国際共同研究航海にも参加しています.
陸上鉱床調査
日本国内で現在稼働している,あるいはかつて稼働していた鉱山を対象として研究試料採取のためのフィールド調査を行っています.鉱床成因を解明するための鉱石試料や周辺の地質体の岩石試料を採取します.時には稼働中の鉱山の坑道に入らせて頂き,見学や試料採取をさせて頂くこともあります.
分析機器
<東京大学>
四重極型誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-QMS):Thermo Fisher Scientific iCAP Q
高周波電流による変動磁場により高エネルギーのArプラズマ (誘導結合プラズマ) を発生させます.エアロゾルとして導入された試料溶液は6,000〜10,000Kに達するプラズマ内で瞬時に分解され,発生したイオンは四重極質量フィルターに導入されます.四重極質量フィルターでは,4本の電極に直流電圧と交流電圧を組み合わせた電圧を印加することで,質量電荷比により元素ごとに分離されて定量されます.このICP-QMSにより,金やレアアースなど様々なレアメタルの含有量を高精度で測定しています.
蛍光X線分析装置 (XRF):Rigaku ZSX Primus II
試料と融剤を混合し,約1200℃の高温で溶融して均質なガラスビードを作成します.このガラスビードにX線を照射すると,試料中の元素の種類と含有量に応じた波長・強度の蛍光X線が発生します.この蛍光X線を測定し,検量線を用いて正確な元素濃度を決定します.XRFは主にパーセントオーダーで含まれる主成分元素を対象に行います.
X線回折装置 (XRD):Rigaku Ultima IV
粉末試料にX線を照射すると,含まれる物質の結晶構造によってX線が回折されます.X線はブラッグの式を満たす角度でのみ干渉により強め合い,回折X線として観測されます.物質ごとに固有のこの回折X線のピーク角度と強度を基に,含まれる物質を同定します.
エネルギー分散型X線分析装置搭載走査型電子顕微鏡 (SEM-EDS):Hitachi Miniscope TM3000
走査型電子顕微鏡 (SEM) は,電子線を試料表面に照射した際に発生する様々な信号を用いて表面構造の観察を行う装置です.試料表面から発生する二次電子の強度から表面形状を観察したり,反射電子 (後方散乱電子) により表面の凹凸や組成像を得ることができます.エネルギー分散型X線分析装置 (EDS) は,電子線により励起された試料中の元素の特性X線を検出することで,含有元素の分布をマッピングすることができます.
<千葉工業大学 次世代海洋資源研究センター>
マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析装置 (MC-ICP-MS):Thermo Scientific Neptune Plus
資源成因や環境変動の痕跡を明らかにする上で重要な情報をもたらすのが,元素の同位体比です.試料に含まれる様々な同位体のわずかな質量差を高精度で検出するために,複数の検出器 (マルチコレクター) を装備しています.試料導入時やプラズマの揺らぎによる検出信号の変動を相殺して正確な測定を行うために,ICP-QMSとは異なり磁場を変化させることなく,ターゲットとなる全ての同位体の信号を同時に検出します.
デジタルマイクロスコープ:HIROX HRX-01
地質試料を構成する粒子,特に微化石などの記載・鑑定には,顕微鏡観察が不可欠です.電動ステージ付きで,焦点合成,自動画像連結,3D合成などが可能な高機能・高精細デジタルマイクロスコープです.
クリーンルーム
正確な化学分析 (特に同位体分析) を行うためには,試料への不純物の混合を極力排する必要があります.そのために,非常に清浄度の高い作業空間 (クリーンルーム) を完備しています.作業時は専用の無塵服を着用し,入室前にはエアシャワーで細かな塵を落としてから入ります.
データ解析手法
独立成分分析
多変量解析手法の一種.古典的な主成分分析や因子分析とは異なり,データ構造に内在する非正規性が最大となるような新しい基底ベクトルを定めます.「ランダムではない」データが持つ最も特徴的な構造を抽出できます.堆積物化学組成の例では,特徴的な組成を持つ物質の混合などが独立成分を構成します.
機械学習
機械学習とは,人間の学習や認識の過程をコンピュータに模倣させることで,データに含まれる体系的な情報を知識や法則として自動抽出する技術です.多変量解析がデータの記述を主な目的とすることが多いのに対し,機械学習はデータから予測性のある一般的モデルを構築することを目的とすることが多いです.